
旅を経て、ドキュメンタリーの世界へ。「普通」を捨てた学生にインタビュー
初めまして!PEERY初代副編集長の、がんちゃんです。
いつもは裏方でコソコソしている自分ですがついに、初登場です。
ほんとにみなさん、お待たせしました。(待ってない)
さあ学生のみなさん。突然ですが、「普通の大学生活」ってなんでしょうか。
3年まではサークル・団体の活動をして、4年を迎えて就活が始まり、そして就職。
これがいわゆる「普通の大学生活」のケースです。
でもこれって、正解なんでしょうか?
もちろん、生き方に正解も不正解もないのでしょうが。
今回はカンボジアで会った旅仲間であり、現役の学生である僕の友人にインタビューをしてきました。
NHKの番組を作り、カナダにロケに行き、現在はドキュメンタリーのフェスに携わる「普通」からはみ出した彼には、一体どんなエピソードが詰まっているのでしょうか。
そして、ドキュメンタリーとは?旅とは?存分に語って頂きます。
日高成樹プロフィール
photo by naruki
22歳 明治大学文学部所属。
大学生活中に、カメラを片手に16カ国を旅する。その経験を生かし、NHK総合で放送した「旅旅しつれいします。」のプロジェクトチームに参画。
また現在ドキュメンタリーチーム「BUG」に所属しながら、ドキュメンタリーの自主制作も行う。フリーランスでプロモーションなどの仕事も、様々なジャンルで行なっている。
座右の銘は「選択と決断」。
──今回は「学生の世界を広げるWEBマガジン」ということで、学生の視野を広げてくれそうな、ヒダカナルキさんにインタビューさせて頂きます。では、よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
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旅に明け暮れた学生時代
photo by naruki
──まず最初に、学生時代は何をされていましたか?
旅ですね。大学1年生の時から始めたのが、海外1人旅でした。長期休暇を使って、一年のうち3ヶ月くらいは海外に行っていました。いつも長期休暇の休みを1ヶ月くらい延長して、先生に頭を下げながらって感じでしたね。(笑)3年間で行った国の数は、15カ国。アジアを中心に、ロシア、アフリカを回っていました。
──ロシアとか、アフリカとかチョイスが良いですね。結構「辺境の地」が好きなんですか?
なんだろうなあ。昔から認められたいというか、周りとはちょっと違うことをしたら、認められるみたいな考えがあって。それで何処か辺鄙な地、誰も見たことのない場所に行って、そこの写真を撮りたいというのはありました。
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──なるほどですね。そういった人とは違うチョイスの国の中でも、印象的な国はありましたか?
印象的な国でいえば、ネパールですかね。2016年の春にネパールに行ったんですけど、ヒマラヤ山脈の中にアンナプールナという山があって、そこのベースキャンプに行くためにネパールに行ったんですよ。そこに登頂するまでには10日間かかって。10日間ずっとお風呂も入らずに、一日8時間かけて毎日ちょっとずつ登って、やっとベースキャンプに着いたみたいな。そしてパッて携帯を見たら、ちょうどその日が誕生日で。(笑)もう過酷すぎて、高山病とかにもかかっていた中だったから、日数とか気にしてなかったんですよね。まあ結局登りきれて、気づいたら誕生日がきてて、それが一番思い出深い一日だったかなと。
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──中々辛いエピソードですね。(笑)それでも、その過酷さがあるからこそ、印象に残る体験なんですよね。
いやでもこれ、良かったエピソードなんですよ。
──そうなんですか。(笑)
死を覚悟した、中国での経験
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一番旅した中で過酷だったのは中国ですね。ただ自分の運が悪いってだけなんだけど。中国に入って3日目に、普通に鉄道で移動してたんですけど、お腹が痛くなってトイレにいったんですよ。自分は普段目が悪いからメガネをかけてるんですけど、トイレが狭いから荷物を汚さないようにと、肩にかけてる荷物を取ろうとしたときに、メガネが落ちて便器に吸い込まれました。はい、3日目に視力を失いました。
──コンタクトはなかったんですか。(笑)
持っていたんですけど、あまりに少なくて。
──それで、そのまま旅を続けたんですか?
もうそのまま続けました。とりあえずその日は一旦落ち着こうと思って。その一時間後に、とりあえずwifiを求めてカフェに入りました。そしてらカフェの店員にミルクティーをかけられました。いやもう、これ以上ねえなって感じになりましたよ。
──フルコンボですね。(笑)
こんな辛いことないって、そう思ってたんですけど。
──え。
その日ですね。向かった先の山で、熊に会いました。
──それはどういうことですか。(笑)
えっと、とりあえず色々重なったから、それを忘れるために登山しようと思ったんですよ。その山には地球の歩き方を読んでいこうと思ったんですけど、そこに書いてある登山ルートを登っていたら、いきなりライオンのような鳴き声がして。間違いなく自分よりでかい生き物の声でした。でもその瞬間、体が固まってしまって、もう影は見えてたんですけど、目を合わせたら終わりっていうのはわかっていたので、とりあえずそのまま固まってました。5秒位風の音がした後に、バッ!っていう足音がして。あ、もう死ぬって察知したんで、そこからダッシュで逃げました。結局1時間くらい、何も考えずにダッシュで山を降りてどうにか助かったんですけど。(笑)とにかく、その一日が旅した中で一番きつかったですね。
旅を通して、過去の自分を克服
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──死にそうな経験までついてきちゃったんですね。(笑)でも無事で何よりです。そうした過酷な経験を幾つもされてきた日高さんには、旅についてテーマのようなものはありますか?
えっとですね、ちょっと良い話になっちゃうんですけど。高校時代、自分はバスケットボール部で部活漬けの毎日でした。そして練習とかだと全然良いプレーができていたんですけど、試合に出ると急に体が動かなくなったりして。元々、「アガリ体質」なんですよね。それは高校の頃からわかっていて、それが原因で大学受験も失敗しました。そして浪人を経て、今の大学にいるんですけど。そうした経験があったから「どうにかして自分を変えないといけない」と思いました。精神力をつけるってやつですね。そしていざ大学に入って、その方法を探ったわけです。今すぐにできて、自分を強くできる方法。それを考えた時に「海外1人旅」という結論に至りました。
──なるほどですね。「自分を強くしたい」というきっかけがあって、旅に出た自分っていうのはやっぱり変化がありましたか?
やっぱり、バックパッカー旅っていうのは行き先を決めているわけでもなかったので、毎日何かしらのトラブルがありました。携帯が気づいたらなくなって、新しい携帯を買って電源つけたら彼女から振られたメールがきてる、とか。いきなり航空券がキャンセルになったり、お金がなくて辿り着いた街で仏道修行することになったりだとか。とにかく自分の予想していない出来事が起こって、最初は焦ったりもしました。でも、少しずつ冷静に対応できるようになって。頭を使って、一つ一つ決断していけばちゃんと次に進んでいけるってわかってからは、気づいたら動揺しなくなってる自分がいました。一年くらい旅をしたあたりから、実感しましたね。
就活よりも「今、自分がやりたいこと」
photo by naruki
──旅をして、過去の自分を克服できたんですね。今話されてる姿も堂々としてました。そんな日高さんも「就活」を迎えて、そこはどうされたんですか?
んー、そうですね。まず、旅がきっかけで始めた「写真」と「映像」というものがあって。それは自分が旅で撮った一枚の写真がきっかけでした。
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この写真なんですけど、周りの人から「その場の雰囲気が伝わってくる」とすごい反響があったんですよ。その時に、写真と映像の道に行こうと決めました。大学に入ったときは、将来何がしたいとかは考えてなかったんですけど、さっきも言ったように写真とか映像を使って、誰かの気持ちを動かせるような仕事がしたいと考えるようになっていましたね。そこで、就職活動の時期になって。やっぱり自然と、映像に関わる会社や映像のプラットフォームを持つ会社を見ていたし、そこに興味が湧くようになっていました。
──では、映像関連の会社に進まれたんですか?
正確にいうと、自分は就職活動を辞めました。それは、自分自身に「今しかできないこと」があったからです。広告やメーカーなどではなく、「映像を作る」ということにチャレンジしてみたかった。これは、冷静に考えた上で決めました。この決断も今思えば、旅に出て培われた決断力だったような気がします。今は週5で会社に勤めてるし、ロケの同伴でカナダに行ったりもするけれど、自分のこの決断を誇りに思っています。もちろん、周りの友達と環境が違うことに対して寂しさを覚えることもあるけれど、旅で培った経験があるから今全力で仕事ができています。
──周りと異なるレールを行くことは、大きな決断でしたね。それでも自分の好きなこと・やりたいことに真っ直ぐな決断は、絶対に間違いないと思います。旅を通して出会った「写真」と「映像」が、今の日高さんのドキュメンタリーに関わる活動に繋がっているんでしょうか。
そうですね、今年の4月から主にドキュメンタリーの番組を作る会社で働かさせてもらうことになってるんですけど。それも自分が旅で会った先輩に紹介して頂いた場所で、そこで今年の月にオンエアされた、NHK総合の「旅旅しつれいします。」という番組のプロジェクトメンバーとして参加させて頂きました。メンバーの中で学生は僕だけで、あとはもうプロの方たちだけなんですよ。でも自分は若い視点や映像技術を含めた大学三年間の経験を活かして「旅」がテーマの番組をいかに良くするかを考えました。そこで色々なアイデアを出せたことは、自分の旅の経験が繋がったなと思います。ちゃんと、番組のクレジットにも載せてもらいました。(笑)
そしてドキュメンタリーの世界へ
photo by naruki
──NHKの番組の制作に関わっていたんですね。しかもクレジットに載ったなんてロマンがあり過ぎます。(笑)そして、日高さんが現在関わっているプロジェクトで「ドキュ・メメント」というものがあるそうですが、こちらはどういうものなんでしょうか。
説明しましょう。(笑)ドキュ・メメントというのは、今自分は制作会社で働かせてもらっているのと同時に「BUG」というドキュメンタリーの若手チームに参加をしていて。日本で今活躍しているドキュメンタリストや、映像に取り組んでいる監督が集まっているチームです。このBUGが主催となって企画しているのが「ドキュメメント」です。これは11月3,4日に開催されるんですけど、いわば「ドキュメンタリーのフェス」のようなものですね。
ドキュメンタリーって、やっぱり若い人たちにはあまり身近ではない分野で、他のバラエティ番組等に比べてある程度気合をいれないと見れないものだと思っています。敷居が高いというか、見ようと思わなきゃ見ないというか。中々みんながみんな見るものじゃないという認識はあります。そこでBUGでは、そういった若者に対して「ドキュメンタリーの入り口」を広げよう、できるだけ多くの人に良い作品を伝えようというコンセプトを持っています。
今までも上映会などのイベントを重ねていたんですけど、今回は、古くは東海道の宿場町として栄えた歴史と伝統を持つ「品川宿」という場所で、その地域の方と協力をしてフェスを開催することになりました。
フェスの内容としては、会場は幾つかの会場に別れていて、20~30人のドキュメンタリストに各会場で登壇してもらいます。
──その中に、過去のTABIPPOのDream優勝者もいられるんですよね。
新福剣士くんですね。
──そこでは何をテーマにしたドキュメンタリーを上映されるんでしょうか。
そうですね。このフェスの特徴なんですけど、ドキュメンタリストだけではなく、色んなジャンルで熱い思いを持っている人達、例えば新福くんのような方たちも集めています。ギャンブルで世界を6周しているプロギャンブラーのノブキさんや、プロのミュージシャンの方、元中国マフィアの方だったり。(笑)そういった方をお呼びして、それぞれの方が今伝えたい思いや、自分の生き様についてドキュメンタリーを通して表現して頂きます。ドキュメンタリーとは、いわばその人の「生き様」だと思っていて、それが音楽であったりダンスであったりするんですけど、そうした自分の生き様を「20分」という時間で伝えてもらう場になります。ピッチングコンテストの様なものです。
「旅」と「ドキュメンタリー」について
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──めちゃくちゃ面白そうですね。日高さんは、旅をして、映像に出会い、今こうしてドキュメンタリーの世界に飛び込んでいると思うんですけれど、この「旅」と「ドキュメンタリー」の繋がりをどう表現できますか?
んーなんだろうな。ドキュメンタリーはさっきも言った通り、一人一人の生き様を映してるものであって。それは被写体にしろ、撮影者にしろ「個」の生き様が映されていると思うんですよ。やっぱり旅っていうのも、自分が思ってもないこと、予期しないことが起きるし、自分の「生きている」という姿が一番出るものだって思います。そして生きている姿や、がむしゃらに生きようともがいている姿の場面場面を切り取っていくものが、ドキュメンタリーであるとしたら、やっぱり旅との繋がりはあると思います。
──素晴らしい言葉を頂きました。今取り組んでいるドキュメンタリーの活動も、原体験は旅にあるということですね。
そうですね。カメラを使うようになったのも旅のおかげだし、自分の生きてるぞという姿を魅せれる場所が「旅」でもあり「ドキュメンタリー」でもあったという感じですね。
燻っている学生にメッセージ
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──今「旅」というものについて語って頂いたのですが、PERRYは「若者の世界を広げる」をコンセプトにしていてます。そこで、まだ旅に出たいけど出れていない、現状に燻っている学生に対して何かメッセージがあれば、お願いします。
自分はこの3年間、ほとんどの時間を旅に費やしてきました。日本にいる時も旅をするためにアルバイトをしたりして、生活の中心が「旅」でした。でも一切後悔といったものはないです。もし旅をしていなかったら、全く違う自分であったことは間違いないと思います。自分探しという言葉は好きじゃないけど、間違いなく旅にいったら何かがあって、それは自分の友だちを見ててもわかっていて。自分を少し変えたいとか、何かを変えたいといった気持ちがあるのであれば、「旅」が一番手っ取り早い方法だし、色々な人に会うチャンスがあると思います。言葉にはならないけど、忘れられずにずっと心の中にある願望や理想がある人は、騙されたと思って一回旅に出てみると良いと思います。
そして、こういう自分自身もまだ将来のことなんて分かっていませんが、それでも目の前にある、自分のやりたかったことができる環境があるので、そこでもがいていきたいと思います。だから、学生の皆さんも「今しかできないこと、やりたいこと」があったら言い訳せずに決断してみて欲しいです。
──最後まで、素敵なメッセージをありがとうございました。インタビューする中で、自分も参考にしたい部分が沢山ありました。
新世代の旅人が集まる、ドキュ・メメントとは?
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ドキュメンタリーと社会を面白くつなぎ直す!
登壇フェス『ドキュ・メメント』生まれたてのドキュメンタリーを生体験!
30人の表現者が2日間に渡って”私のドキュメンタリー”の登壇ライブを行います。
舞台は、昭和の匂いが残る東海道の宿場町、品川宿。
物語が生まれる瞬間を一緒に作りませんか?
作る人・見る人・出る人が垣根なく混じり合う、2日間のドキュメンタリー体験を作ります!
公式サイト
スケジュール、チケットはこちらから!
http://docu-memento.com/
公式Facebookページ
様々なジャンルの記事を毎日更新中!
https://www.facebook.com/bugdocument/
photo by naruki
また『ドキュメメント』では、新福剣士くんをはじめ、旅人が多数登場するトークセッションも開催します!
古くから旅人が行き交ってきた東海道に、新世代の旅人たちがやってくる!
ドキュメンタリープロジェクト『旅旅しつれいします。』(2017年・NHK総合)から広がった旅人ネットワークが集結。
詳しくは、こちらをご覧下さい。
http://tabitabi.life:3000/assets/site/prog_tabitabi.html
【開催概要】
2017年11月3日(金)~4日(土)
会場:北品川周辺一帯 (京浜急行線北品川駅、新馬場駅からお越しいただけます。)
さいごに
photo by naruki
いかがでしたでしょうか。
「普通の大学生活」なんてよく聞きますけれど、それは勝手に自分でそう決めつけてるだけじゃないんでしょうか?
世間に流されるのではなく、彼のように「自分で決断する力」が僕ら若い世代には求められているような気がしました。
そして、彼の勢いの根底にあったのは紛れもなく「旅」でした。
まだ挑戦することを恐れている人は、とりあえず決断してみましょう!
そこからがスタートです。